「ままらぶ」から約3年、遂に[HERMIT]から新作が登場。
シナリオにはもちろん丸戸史明氏が参加。
愛を失い、職を失い、希望を失い、ついでに若さも失いかけの主人公・芳村理(28)は、やけ酒とばかりにスナックでなけなしの金を使い果たし、路上をさまよっていた。
そんな時、お店の売れっ子らしくたくさんの上客に囲まれていた女性に、いきなり声をかけられ、優しく励まされる。
運命を感じた彼は、決死の覚悟で年上のひと、穂香に告白することを決意するが……
『困ったことがあったらいつでも訪ねてきてくださいね』
そんな言葉とともに告げられた、彼女の経営しているというアパートの住所を尋ねてみれば、テラスハウス陽の坂とは名ばかりのオンボロ長屋。
しかも、彼を出迎えたのは、穂香とは親子ほども歳の離れた……というか実の娘の美都子(身長145cm)だった。しかも、運命を感じたはずの穂香は、娘におんぼろアパートと奇妙な住人だけを残し、他の男と駆け落ちをしていたのだった。
こうして始まった、高身長・高学歴・無収入なリストラ青年(本人談)と、頑張り屋で健気だけどちびっこ(本人は否定)な少女との、凸凹な一つ屋根の下での生活。
奇妙な住民たちのペースに巻き込まれ、ただでさえ気が休まることのない毎日に加え、再就職先の同僚には何故か大胆に迫られ、隣のお嬢様には何故か暗躍され、そして美都子の担任教師にいたっては何故か……黒ストで。
不幸に骨まで愛された主人公の明日は果たして……
各ヒロインでルートに入る時期が違い、早いヒロインと遅いヒロインでは共通ルートの長さに倍以上の差があります。
順番は、早い順に夏夜・姫緒・麻美・美都子です。
シナリオは丸戸氏の全力投球ということで、人の絆を感じる心温まる物語です。
1軒のボロアパートを舞台に、そこに住む住人とその関係者達が支え合って困難を乗り越えていきます。
序盤は内容的には重たい展開のはずですが、それを感じさせない雰囲気で進んでいきます。
しかし後半になると更に大きな問題や、主人公を巡る女の戦いが勃発。
大きな決断は罪悪感を生む場合が多く、ギャップに軽く鬱を感じることも。
主要人物はみんなどこかNG(ダメ)な部分を持っていて、それがこの作品の特徴であり、魅力であり、そして弱点でもあります。
このダメな主人公達を応援することが出来るか、それとも嫌気が差すかで楽しめるかどうかが極端に変わるのではないかと思います。
声優陣は実力派で固められていて、その演技力は流石です。
ちなみに珍しく主人公までもを含む男性キャラフルボイスです。
絵は少々特徴的で好き嫌いがありそうです。
ダリダリのお気に入りは……難しいですね。
サブキャラ含めみんなお気に入りと言えばお気に入りです。
でも敢えてあげるなら麻美でしょうか。
彼女は本当に不運な人です。
個人的には彼女が一番の絶望を感じた人だと思っています。
なので、幸せになって欲しかったです。
まあ、彼女が不運でなかったらこの物語は無かったのですが。
美都子は"娘"ですかね。
まだまだ甘えたい盛りの彼女がその境遇ゆえに、負けないように大人達に必死に強がって噛み付いている姿は見てられません。
彼女の心境を理解すれば、守らなければいけないと思えてきます。
幼い彼女を辛い環境に捨て置いた穂香に殺意を覚える人も少なくないのでは……。
人の繋がりの大きさを感じさせてくれる物語。
笑って泣いて最後に泣きながら笑えるそんな作品でした。
テーマ:美少女ゲーム - ジャンル:ゲーム